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緒方孝市著「赤の継承」を読んでみました。(後編)

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広島カープ
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こんにちは。3回にもなってしまいましたが、今日がラスト! 緒方監督3年目の二連覇を達成した年から監督辞任の年までを解説したいと思います。

球団史上最高勝率で独走優勝した二連覇

緒方監督自身もチームも優勝を経験したことで、勝利への意欲はさらに増したそうです。一度その喜びを体験したことで「何度でもこの喜びを味わいたい。」と頂点への執着はより一層大きくなっていきました。

この年は黒田選手の引退もあり、期待したのは若手の選手の台頭でした。カープの場合、FAで他球団から選手を獲得するのは難しいし、現役バリバリのメジャーリーガーを獲得するというのもありませんので、若い選手が力をつけレギュラーを獲得することでしかチームの新陳代謝は起こりません。

そこで緒方さんは腹を括り、鈴木誠也選手を4番に据えることを決断したようです。打撃コーチの中には「まだ早い」という声もあったようですが、新井選手もいつまで続けられるかわからない中、生え抜きの4番を育てるのがチームの悲願だったそうです。

鈴木誠也選手は心配もなんのその、8月23日に怪我をして離脱するまでは素晴らしい成績を残しています。

そしてこの年のトピックスは外国人選手も自前で育成をはじめたことだそうです。ご存知の通りカープにはドミニカ共和国に「カープアカデミー」という施設をつくり現地選手を育てる試みをスタートさせていました。そしてこの年にバティスタ・メヒア選手が出て来てくれました。二人の育成が成功して以降、チームはカープアカデミーから積極的に選手を呼び寄せるようになりました。フランスア選手もその一人ですね。

カープは選手・コーチに続いて外国人選手も自前で育て上げるという方針を打ち出したのでした。

緒方さんはチームリーダーを作らず、全員活躍というチームコンセプトを掲げることで若い選手にも自発性と責任感をもってもらう事を狙いました。そう考えると選手が育っていく上で役割をあたえることは非常に有効だそうです。明確な役割を与えひとつの駒として自立させ、駒として試合に絡むことで成功体験を積ませ実戦の感覚を肌で学ばせる。だからと言って最初に与えられた役割をずっと続けていかなければならないわけではないのです。今度はそこから新たな武器を身に付けることによって新たな段階に入っていくそうです。まさに緒方さんが成長した方法と同じだと思います。

こうして選手達が逞しく育ったこともあって球団史上最高勝率で独走で二連覇を果たすことになったんですね。

チームの完成による三連覇

監督4年目となる2018年は、打撃コーチの石井琢朗さんと守備走塁コーチの河田雄祐さんが退団されました。この年の初めは連覇を支えたコーチ陣を作り直す作業から始まりました。緒方さんはスタッフ全員の力を借りて一緒に戦っていくんだという空気を作りましたが、特に力を入れたのはトレーナーとスコアラーだったそうです。

スコアラーには他チーム同様、自チームに関するあらゆる情報も丸裸にする役割が与えられていました。選手にミスをした時などの気持ちを引き出すのもスコアラーに任せていたようです。トレーナーは選手の体調やコンディションを全て知っている存在です。メンタル面でもトレーナーに尋ねていたようです。この時にはチームの組織というものが完璧に出来上がっていたようです。

この年は野手では「タナ・キク・マル」が29歳と成熟した年になり、野間俊祥選手がブレイクしたりしました。投手では大瀬良投手が最多勝・最高勝率の二つのタイトルを獲得しました。またフランスアの活躍やアドゥア選手・中村祐太選手などの若い選手たちも出て来ましたね。

また広島では豪雨災害に襲われ甚大な被害がでました。こうした災害が起こったこともあり、どうしても地元優勝を決めたかったようです。広島の人たちと一緒に優勝の瞬間を迎えたい・・・それは選手もスタッフも同じで悲願と呼べるこの気持ちを軸にチームはまとまったそうです。

そして迎えた9月26日、カープはマツダスタジアムで優勝を決めました。

王者の試練「勝ち続けること」の困難

この年は新井選手の引退、丸選手のFAでの巨人への移籍、エルドレッド選手の退団と主力選手が何人も抜けてしまいました。

若手育成により組織の刷新を図るのは毎年の取り組みですが、こうした外的要因によりこの年はより一層ダイナミックに行わなければならなくなりました。

そうした中で挑んだ挑んだ新シーズンはスタートダッシュに失敗しました。この年は奇妙な年で、本当に同じ選手がプレイしているとは思えないほど大型連敗と大型連勝を繰り返しました。その背景には三連覇を支えた中心選手の離脱がありました。

主力選手が流出したかもしれませんが、若手選手にも力のある選手が多いので、うまくハマった時には連勝しますが、落ち着かない状況のせいかミスも生まれ、勝てる試合もたびたび落としていました。

たとえ若い選手を抜擢して持てる力を発揮しても、彼らはその状態を長続きさせることが出来ません。新しいさいのうの活躍で瞬間的にチームを盛り上げることが出来ても、少し研究されると打てなくなったり抑えられなくなったりします。そうするとまた別の誰かを抜擢し、ハマると連勝、それが続かなくなるとまた作りなおし・・・とチームは果て無き試行錯誤の道を進んでいきました。

この年、チームは連勝・連敗を繰り返しながらもなんとかAクラスの座を死守していました。しかし最後の最後でCS進出を逃してしまいました。

緒方さんは2015年と2019年はどこか奇妙に一致していると言います。

監督一年目の2015年は勝つことの難しさを教えてもらい、五年目の2019年は勝ち続けることの難しさを教えてもらったと書かれています。

緒方さんはもともと一年契約で、複数年とういう保証はありませんでした。一年目こそ4位という結果でも続投しましたが、それからは優勝しなければ辞任すると考えていたそうです。たまたま三連覇をしたので監督を続けていましたが、この年優勝を逃した時にもう監督辞任を決断されていました。

緒方さんからの願い

最後に緒方さんはカープOBとしての願いを述べられています。

それは、これまで70年間カープが継承してきた「いいもの」はこのままずっと残ってほしいということです。

それは猛練習の伝統かもしれないし、若手を育成し指導者も育てていくという頑固なまでの自前主義かもしれないし。時代の流れによって変わっていく部分はあるかもしれませんが、カープはカープであって他球団とは違います。だからこそ多くの人が応援してくれたのであって、そのことは絶対に忘れないで欲しい・・・と

「赤の継承」を読んでみて

この本を読んでみて、緒方さんの苦労や葛藤が目に浮かびます。しかし広島が盛り上がったあの25年振りの優勝の感動もまたよみがえってきました。

そしてカープ野球・カープの伝統に触れる事がでました。カープの「自前で選手を育てる」という方針は有名ですが、具体的な内容を見ることが出来て面白く読み進められました。

カープは他の球団と違い独特な球団と私も思います。それは緒方さんが言う通り良い所もあり悪い所もありますが、それゆえに惹かれる球団だと私も思います。このままのカープであって欲しいです。

今年のカープは、野手陣では菊池・田中・曾澤選手とベテラン選手が引っ張り、鈴木誠也選手や西川選手などが主力選手と成長しています。投手陣も先発投手は大瀬良・森下投手など駒は揃ってきて、これに新人選手には酷な注文かもしれませんが栗林・森浦・大道選手達が中継ぎ・抑えと機能してくると三連覇をした時のような強いカープが戻ってくると信じています。

またあの時のようなカープが見たいです。

最後に私はカープの伝統や内情、緒方さんのその時々の心境や考え方などに興味を持ったのでその事を取り上げてきましたが、本の中にはその他にもいろいろな事が書かれています。

特に私は触れていませんが、日本シリーズの事も詳しく書かれています。その時の状況や戦術、ソフトバンクの真の強さなどとても興味深い話ばかりでした。是非皆さんも読んでみて下さい。

では今日はこの辺で。最後まで読んでいただきありがとうございます。 また次回で・・・

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